今回でチベット滞在都合9ヶ月。
ずっと許可証なしの非合法旅行をしてきたのだが(自ら出頭したアリは除く)、ついに今回公安に捕まってしまった。
場所は東チベット非開放の町、昌都。
鉄道開通したせいか、間もなくチベット入域許可が必要なくなる、という噂が外国人旅行者間を駆け巡った。
実際雲南省方面からのラサ行きローカルバスは中国人料金で外国人も乗れるようになり、道中数ヶ所あるチェックポストはゲート開きっ放しで見張りは居らず、こりゃいよいよ本当か?!とまったく何の警戒もなくその町の宿に泊まっていたのだ。
して滞在4日目の深夜2時…。
突然ドアを激しくノックする音で飛び起きた。
強制的に鍵を開けられ中に入ってきたのはMP含む公安5人。
「身分証を見せろ!」どうやら違法外国人旅行者狩りではなく、安宿に潜む不穏分子チェックのようで「なんだ、外人か」とさっさと帰ってしまった。
そこで機転の利く者ならその後に起こりうる事態に備え素早く手を打つところだろうが、何しろ真夜中で公安に対してもナメ切って考えていたので、のん気に二度寝に入ってしまった自分が今となっては恨めしい。
して数時間後の朝8時、またしても激しいノックの音。
入ってきたのは紛れもなく中華人民共和国公安部外事課の男。
「この町は非開放だ。パスポートをよこせ。そして今すぐ署へ同行してもらう。」
万時休す。
パトカーに乗せられ、向かった署内でアーだコーだ説教され、有無を言わさず罰金400元(6000円)の刑。これだけで済めばまだよかった。
何しろ法律を犯しているのは明らかなのだから。
しかし外国人、特にサイクリストや徒歩旅行者が最も恐れているのは「追放」。
ここまで何日もかけて必死に頑張ってきたのを全て無にしてしまう恐怖の宣告。
まさにそれを受けてしまった。
「即刻バスターミナルへ行き、即刻チケットを買い、即刻雲南行きのバスに乗り、即刻チベットから出て行け。」
親切な公安さんはパトカーに乗って一緒にバス停まで行ってくれ、国家権力を利用し窓口前の行列に横入りし、240元(3600円)のチケットを買わされた。
合計一万円の大出費、それ以上に「追放」という処分の重さのショックに倒れそうになっていた。
しかししかし。
やはり毎日あのまずいツァンパを食べ続けるような信心深さが天を我に味方させた。
その日のバスはすでに満席で明日のしかない、と言われたのだ。
悔しそうな公安は窓口の女に「もしこいつが払い戻しに来ても取り合わないように」と言い残し去っていった。
去ってゆく公安の背中は心なしか寂しそうだった…なんて気にするはずもなく、すぐさまダッシュで宿へ戻り荷物をまとめてチェックアウト。
そして一路西へ、逃げろや逃げろ。
しばらくは後方からの車が逃走した私を追ってきた公安ではないかとビクビクしていたが、十数kmも離れればもはや堕落した公安が追ってくるはずもない安全地帯。
いやはや、とんだ捕り物劇かな。
2006年11月5日日曜日
御用だ!!