2008年1月6日日曜日

人間の証明

中国のとある小さな町で。
今日泊まる宿を求めてそこら辺にいる人に「安いとこある?」と聞いてみた。
すると「あっちに安いとこあるけどあんなとこ泊まっちゃダメ。こっちの高い方にしなさい。」と言う。
別にどんなひどくてもどうせただ寝るだけなので、その安い方へ行ってみた。
行ってみてその人が勧めなかった意味がすぐ分かった。
一泊5元(75円)と激安ではあったが、ロビーにウサン臭い男らがタムロっていて雰囲気メチャメチャ悪い。
建物も薄暗くまるで魔の巣窟のよう。
それでもそこにチェックインし、言われた階に上がってみるとその音を聞いて他の部屋から人々が顔を出した。
それらが皆若い小姐なのだ。
当然ピンとくる。
ここは売春宿でもあったわけだ。
それでもまあいつもの調子でそのウサン臭い男らや小姐らとも仲良くなり雑談などしていたのだが・・・。

「今日も暑いですね。ところでお姉様方は多少銭?」
「15元よ。」
「ん?150元?」
「違うわよ。15元(230円)よ。」
「・・・・・・。」

バリューセットよりバリュー・・・。

「いやいやまあ安いのは消費者としては大変結構なことなのですが、それにしても同じ仕事するならお姉様方ほどの若さと器量があるならこんなハキダメみたいな所じゃなくて、せめて街の床屋で働けば100元くらいはとれるんじゃないの?」
「それは無理よ。だって私らには戸籍が無いもの。」
「!!」

一人っ子政策実施中の中国では、2人以上生まれてしまった場合、あるいは男手必要なのに女の子が生まれてしまった場合、多額の罰金から逃れるため出生登録されない戸籍の無い人間、つまり人口には数えられない人間が出現してしまう。
その数は一億とも二億とも言われている。
たとえ実際はいかがわしい事をしている床屋であろうが、一応名目は床屋なので雇われるにはれっきとした「存在する人間」でなければならず、「存在しない人間」はこのような日陰の日陰でしか生きていけないのだろう。

一人っ子政策の弊害がこんなところにも現れていたとは・・・。